手紙をもらって

S先生が次のような話を聞かせてくれました。
「通園バスの当番のとき、卒園生が私を待っていて、封筒に入れた手紙をくれたんです。見たら3枚にもわたっていろいろ書いてあってとても嬉しかったです。それにしても、4月に入学したばかりでもうこんなに文が書けるようになって、すごいなと思いました。」
自分からどんどん話すタイプではなく、どちらかといえば大人しいお子さんだったとのことでした。だから、3枚もの手紙を書いて渡してくれたことに、先生は驚いたし嬉しかったのでしょう。
私は、
「きっとそのお子さんは、もともと心の中には言葉がたくさんあったのだと思いますよ。小学校へ入って字を習い、文を書くことを習いということがあって、何か自分で先生に書いてみたくなったのでしょう。」
と、話しました。
そのお子さんが手紙を書いたことにはたくさんの意味があります。まず先生に大変親しみを持っていたこと、次にお話ししたい(書いて知らせたい)ことがいっぱいあったこと、そして相手に伝えるための手段を学習しそれが身に付いてきていることです。
文字を習い文の書き方を習ったからといって、文章表現をするようになるわけではありません。日々出会う事柄に心が揺さぶられ楽しかったり嬉しかったり疑問に感じたり不思議に思ったり・・、そうした柔らかな感性の上に、文字というアイテムへの知的な関心が加わって初めてこの話の中の手紙につながるのだと私は思うのです。
幼稚園では、なにをはぐくむことが大切なのか、この話はそれを教えてくれます。